1 前書き
柔道部物語は1985年から1991年まで週刊ヤングマガジンにて連載された柔道部漫画です。
少し古い漫画になりますが、柔道部漫画といえば、まず真っ先にこの漫画が挙がるでしょう。全11巻と今の漫画からしたらコンパクトな巻数ですが、話のテンポがよく、主人公の三五十五の高校3年間を描き切った濃密なストーリーとなっております。
柔道部の雰囲気を忠実に再現した描写が面白く、連載当時に中高生だった方には刺さりやすい作品だと思います。三五も恐ろしい勢いで成長していくので、無双感も感じられるかもしれません。
時代ならではという描写が少ないので、今読んでも古さはあまり感じず楽しく読めるのではないかと思います。
2 あらすじ
そんなに複雑な要素はないので、あらすじも大体こんな感じになります。
初心者がスポーツをはじめて、成長していくというストーリーになります。
○中学時代は吹奏楽部だった三五は先輩の甘い言葉に乗り、柔道部に入部することにな る。柔道部の独特の体育会系的しきたりに戸惑いながら、元五輪候補の五十嵐先生の指導 を受け、練習に励んだ三五は頭角を表して行く。
3 作品の特徴
○柔道部の雰囲気を忠実に再現
この漫画は当時の柔道部員にとってバイブルだったらしいです。
古賀稔彦さんや野村忠宏さんも愛読者です。
私は柔道部未経験者ですが、それでも雰囲気はよく伝わります。柔道部あるあるエピソ ードはどれも秀逸なものばかりです。
○柔道部特有の謎の挨拶がある。
○新入生可愛がりイベントがある(悪い意味の可愛がり)
○柔道部はイケメンでもモテない
○引退した瞬間、坊主頭をやめて髪を伸ばし始める。
○インターハイに出場したのに、野球部が甲子園に出場したせいで学校で空気扱い。
私は1番下のエピソードがかなり好きですね。マイナーな部活って全国レベルで活躍 しても、学校内でそんなに褒めてもらえないんですよ。野球部って案外地方大会一回戦負 けレベルでも学校挙げて応援してもらえたりしますしね。
作者の小林先生も柔道経験者というところで、この辺の空気感は柔道経験者、体育会系 の方には刺さるかもしれません。
分かんなくても、ギャグとして普通に面白いので、ぜひ読んでみてください。
○試合シーンが激アツ
柔道経験者である小林先生は相当柔道をリスペクトされていると思います。
まず、柔道シーンの絵がめちゃくちゃ魅力的です。
組手争いの激しさや技を堪える瞬間、止まっている絵なのにどうやって動いているか イメージができるし、スピード感もある。技の切れが凄くて、一本を決めた時、背中を叩 きつけられた選手が痛そうに見えます。
台詞回しもめちゃくちゃいい。シンプルな表現ですが、伝わる。名言風な雰囲気はなく て、サラリと発せられているのですがすごい。小林先生は休載の多い漫画家だそうですが、 どうやって凝縮するか熟考していたのかもしれませんね。
五十嵐先生の「俺は柔道が得意だったんだ」とか千代崎の「どれだけ努力しても報われ ないことがあるのか」とか名言だらけですよ。
○超努力型ライバル西野
大抵のスポーツ漫画は主人公が努力型で、ライバルが天才型というイメージがあります。
柔道部物語はライバルが努力型で、主人公が天才型なんですよね。主人公の三五は中学
時代は吹奏楽部で高校から柔道を始めたにも関わらず、1年で全国レベルの選手になる大天才です。
ライバルの西野も天才ですが、努力が強調されている選手です。人格面に相当難があって、いびりで部員を追い出すわ、相手選手の骨を故意にへし折るわとやりたい放題ですが、それでも努力量と結果は誰からも称賛されています。
天才が努力して、超努力家を倒すというのは、作中にもありますがある意味残酷な物語ではありますよね。死ぬほど頑張ってたのに、追い越されちゃうわけですし。
西野は自分が三五に負けても、嫉妬には狂わない。むしろ、俺とお前で金メダル2個取るぞと三五に発破をかけてきます。クズですが、強さに対して純粋で爽やかな面もあるんですよね。
西野って結構二面性のあるキャラクターで、そこが魅力的に思えます。母親や恩師を大事にしているし、負けたら涙を流したりするんで、人間味はあるんですよ。
一見矛盾した描写にも見えますが、人はいいやつ、悪いやつに二分できるわけではないので、誰しもいい面、悪い面がある。西野の場合、どちらも描写されることで、より魅力的なキャラクターになったと思います。
最終巻の西野周りの描写は秀逸で、西野に関わる登場人物の台詞がどれもいい。西野の恩師が病院から西野に思いを馳せるシーンで私は泣きそうになってしまいます。
どれだけ嫌なやつでも、その人を思っている人はいるんですよね。西野の愚行に悩まされ、胃を痛めた先生がそれでも西野を心配してくれるんですよ。
単なるクズであれば、ここまで魅力的な最終巻にはならなかったでしょう。部活ものとして最高の完成度を誇る柔道部物語を更に面白くする魅力的なライバルだったと思います。
4 最後に
今回は少し古い作品でしたが、私自身が名作だと思っているので、紹介させていただきました。
柔道部漫画といえば、この漫画だと思っています。テンポ、物語、キャラクター、画力全てが素晴らしく、読めばきっと楽しめるはずです。
ヤンマガWebで現在は読むことができますので、ぜひ機会がありましたらアプリ等でお読みください。