よふかしのうた~夜の街を歩くのは楽しそうでうらやましい~


1作品の概要

よふかしのうたは週刊少年サンデーで2019年から現在まで連載中で、2022年7月からアニメも放送中です。 

作者は「だがしかし」の作者としても知られるコトヤマ先生。2作続けてのアニメ化となります。 

夜の街を舞台に、吸血鬼七草ナズナと不登校中学生の夜守コウの関わりを描いたいわゆるボーイミーツガールものです。 

本作の主人公であるコウは、周りに馴染むべく明るい優等生として振る舞っていましたが、女子の告白を断ったことを周囲に責められ、不登校になります。 

深夜外出した際に、吸血鬼であるナズナに出会い、夜更かしの手解きを受けます。夜更かしを楽しみながらも、こんなことを続けてちゃいけないと言うコウにナズナは 「別にいいじゃん。学校なんてつまんねーだろ。今日に満足するまで夜更かししてみろよ」と新しい生き方を勧めます。 

その言葉に感銘を受けたコウは自分も吸血鬼になることを目標にしました。吸血鬼になる方法は人間が吸血鬼に恋をすること。コウはナズナに恋するため、日々過ごしていくこととなります。 


2 夜の世界=アウトサイダーの世界


ナズナと出会ってから、コウは毎日静まり返った夜に家から抜け出して、夜な夜な憧れのお姉さんのところに足繁く通っていくんですよね。 

2人でゲームをしたり、夜の校舎で遊んだり、非日常的な体験を色々するわけですよ。で、ナズナに血を吸わせる。特殊な形ですが、ナズナの表現を借りればまぐわいですよね。妖しくもエキサイティングな体験ですよね。 

吸血鬼になりたいかは別として、同じ立場だったら、すごく楽しそうだなと思います。 

寄り道や逸脱を楽しめる人の方がこの漫画は楽しみやすい気がします。常識に従って物を言うと、コウは遊んでないで勉強しろよというのが正論でしょうからね。 

でも、人によっちゃ昼の世界って結構退屈じゃないですか。自分の毎日を列記していくと、大体同じことをやっていませんか? 

学生だったら朝起きて、学校に行って好きでもない人と交流して、特に目的もなく部活に行き、時間がただ流れていく。周りはなんか楽しそうにしているけど、自分は共感できない。なんで生きてるのかよく分かんねえなみたいな。 

世の中で尊重されている常識って誰しも順応できるわけじゃないんですよね。 

いい学校目指して、いい会社入って、結婚相手見つけて幸福になる。それできねえなって思ったことありませんか? 

いわゆる幸福な生き方が自分に合ってるならいいけど、そうじゃなきゃ苦しいですよ。「普通」ができない自分が異常者のように思えてきちゃいますからね。 

自分が楽しいと思える居場所を見つけられることは本当に羨ましいです。夜が心地いい人もいるわけですし、夜更かしする中学生だっていてもいいんじゃないかなと思います。 

よふかしのうたを読むと、今いる世界に馴染めなくても、違う場所なら楽しく生きていけるかもしれないと少し勇気が湧いてきます。 

3 夜の世界は夢の国ではない。

ただ、夜が常に肯定的に描かれているわけではないというのが、よふかしのうたの面白いところですね。 

作品の最初は「夜」が夢の国ガンダーラみたいに扱われていますが、物語が進むにつれて相対化されていきます。 

最初はナズナとコウだけの世界でしたが、吸血鬼たちとの出会いにより、いろんなパターンを知っていくんですよ。

必ずしも、すべての吸血鬼が幸せになっているわけではない。吸血鬼は異物なので、人の世は多少なりとも住みづらいところがある。吸血鬼の存在が広まれば、排斥される可能性もあります。
 
しかも、吸血鬼になった時点で、人の社会からは外れた存在になるわけで、その選択は不可逆です。 

不老不死の生き方は幸福そうに見えますが、変化がないともとれるかもしれません。

物語が進むにつれて、夜の導き手として絶対的な存在だったナズナも悩みがあると分かっていきます。

考えてみれば当たり前のことなんですよね。どの場所も長所、短所がある。みんなそれを踏まえたうえで、自分にとって心地よい場所を選択していくんだと思います。

自分が生まれ育った明るい世界を選ぶのか、憧れの人が住んでいる夜の世界の住人になるのか。コウがどういう選択をするのかってのが楽しみです。コウの視野が広がり、物語はさあこれからだというところです。 

2022年7月現在、まだ11巻までしか刊行されていないので、今からでも追いつけます。 

アニメを見て楽しそうだと思った方、ぜひ原作も読んでみてください。 


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