メダリストは、2020年から月間アフタヌーンで連載中のフィギュアスケートを題材にした漫画です。アフタヌーンだけでなく、アプリのマガポケでも読むことができます。
元アイスダンスの選手だった司がコーチになり、フィギュアスケート初心者のいのりと一緒に世界を目指していくというストーリーです。かわいい女の子がいっぱい出てきますし、コミカルなシーンも目立ちますが、スポーツ漫画の王道を行くマンガです。
試合の緊張感が伝わる描写や主人公の成長とその説得力、そして人間ドラマもありと語りつくせないほどの魅力があるマンガです。
私の中では今一番ホットな漫画です。今回は推しポイントを三つあげたいと思います。
この記事をきっかけにメダリストを読んでくれる人がいたら幸いです。
1.いのりの成長ぶり
メダリストはコーチ司と選手いのりのダブル主人公の漫画ですが、いのりの成長ぶりはこの漫画の見どころの一つです。
第1話のいのりはそれはもう気弱な少女でした。勉強もできないし、スポーツもできない。手先も不器用。要領も悪い。クラスメイトとも仲良くすることができませんでした。ドラえもんののび太にイメージが近いです。
フィギュアスケートをやりたいという気持ちを母親にすら表現できませんでした。司が母親を説得しなければ、いのりはスケートをはじめることはできなかったでしょう。
スケートをはじめてからも自信がないからか様々なことで不安になったり、揺らいだりするわけです。試合前の練習で失敗すればナーバスになりますし、周りが自分よりうまいと焦ったりもします。
それでも、時に司にフォローされながらも、自分を奮い立たせて立て直していきます。
いのりのフィギュアスケーターとしてのキャリアは10歳からと、幼稚園児からやっているような選手に比べるとかなり短く、それはいのりも理解していますがし、弱気になったりもしますが、やるべきことに全力で取り組んでいきます。
少しずつ強くなって、壁を一つずつ超えていく姿を見ると、子どもの成長を見守っているような気持になります。
転んでも立ち上がれることは普通ではありません。いのりより成熟した大人でも挫折に打ちのめされて、頑張れなくなったことはたくさんあるでしょう。
作中では描写されていませんが、いのりもフィギュアスケートを始める前は打ちのめされる側の人間だったのではないでしょうか。自分が心底愛するフィギュアスケートを通じて、試練に立ち向かえるような人間に自分を変えていったのです。
もし、この漫画を手に取るようなことがあれば、第20話「下克上」まではできれば読んでほしい。いのりの成長に感動できるエピソードです。メダリストに章立てがあるとすれば、第20話前後の話が第一章のクライマックスになると思います。
2 競技の描写
メダリストというマンガは競技シーンの表現がめちゃくちゃいいと思います。絵も臨場感がありますし、スポーツの試合前でピリッとした緊張感も伝わってきます。
私が推していきたいのはミスをした選手の心理描写です。
印象的なのは、いのりのライバルである三家田選手がミスしたときの描写ですね。
三家田選手はジャンプを得意とする選手ですが、試合でジャンプミスをしたため、ルールを忘れて同じジャンプを繰り返すなど演技がガタガタに崩れてしまいました。
「今まで一度も失敗したことなかったのに」
「もう優勝できんじゃん」
「ママもオトンも見にきとるのに」
失敗してネガティブな感情が次々浮かんでくるのはすごく共感できます。間近にやるべきことが迫っているのに、直近の失敗に心が引っ張られちゃうんですよね。普段ならできたのにと言う気持ちも痛いほど分かります。練習で何回成功しても、本番のたった一回の失敗ですべてが台無しになっちゃうんですよね。
三家田選手はコーチのリカバリーすれば、巻き返せるという祈りも通じず、結局演技を立て直すことができませんでした。
スポーツ漫画的にはライバルが立て直して、よりすごい演技をするというのが王道だと思いますが、これはこれで誠実な描写だと思います。
フィギュアスケートは氷の上を跳んだり、跳ねたりするのでミスがつきもののスポーツです。メダリストは競技の性質と向き合って、選手がミスしたときの描写を大切にしていると思います。ミスを立て直せる人もいるし、崩れたままの選手もいるでしょう。どちらの描写もあった方がリアルだと私は感じます。
3 フィギュアスケート導入用漫画として
私は正直フィギュアスケートに詳しくありません。ジャンプで転んだら負けだと思っていましたし、ジャンプはとりあえず難しいものを跳べばいいんじゃないのと思っていました。スケートやスピンに点数がつくことも知りませんでした。
(フィギュアスケートファンの方ジャンプのことしか気にしてなくて申し訳ございません)
メダリストを通じて、私も駆け引きを知ることができました。難しい技に挑戦する戦略、できることの完成度を高めていく戦略、高得点ジャンプを体力がある前半に跳ぶか、高得点が期待できる後半に跳ぶか、様々な戦略があることを理解できたので、これからリアルなフィギュアスケートを見るときも、誰がどの戦略で挑んでいるか想像すると、より競技が楽しめそうです。
あと、ジャンプ以外は興味を示さないフィギュアスケーターとか、注目選手の演技が終わると観客が帰っていくなど、細かい描写が好きです。多分、あるあるなシチュエーションなんじゃないでしょうか。私はフィギュア素人ですが、こういう描写から業界の空気を感じ、とても興味深かったです。
この記事では3つの魅力についてお伝えさせていただきました。冒頭にも申し上げましたが、ほかにも語りたいことはたくさんあります。それだけの魅力がメダリストというマンガにはあります。
(司といのりの関係性はかなり語りたい)
本ブログを読んで、メダリストに興味を持っていただける方がいましたら、一ファンとして幸いでございます。月間アフタヌーン本誌、単行本、マガポケなどでぜひお読みください。